「刺身の上にたんぽぽを置く」機械の微調整はもうやだお

人手で刺身の上にたんぽぽを並べるのは人件費がかかるので、機械化(何)されています。
今回は、今まで「刺身を載せている皿」でたんぽぽの位置を決めて置いていたのを、刺身の色まで考慮してたんぽぽの位置を決めるという調整がお仕事。
 §
来る日も来る日も、たんぽぽが舞い降りる位置を確認するために、必要な分だけの「刺身パターン」のトレイを作ってひたすらレーンに流し、出てきたトレイのたんぽぽの位置を確認しまくる。
一部が違えば、また調整して、全ての刺身パターンを流す必要がある。本番環境では一度動き出したら途中で止めてパターンを調整するわけにはいかないため、一連のパターンは一度に流さないと行けないのだ。
 §
大体の調整が終わり、本番さながらの試験。ひとつひとつのパターンはクリアしているはずではあるが、一連のパターンを通すのは(正式には)初めてとなる。
高速で流れていくトレイを1つずつ目視確認することは困難なため、サシミパターンの投入順番とたんぽぽ出力位置をまとめた資料を用意し、出てきたトレイを録画したビデオをスロー再生しながら、資料のたんぽぽ位置と見比べるという作業が待っている。
……1セット目が終わった。ぱっと目視した感じでは正しくたんぽぽは置かれているようだ。ビデオが録画されていることを確認しつつ、第2セット準備のため、テスト用刺身(無論食品サンプルだ)からたんぽぽを引きはがしていく下っ端たち。
2セット目の準備を他人に任せつつ、1セット目のビデオを確認。大体問題ないようだが……ん?1箇所違和感。
 §
その後、同じ箇所を何度見直しても結果はおかしく、順次行ったテストのセットでも同様の箇所で問題が出ているようだ。
調整したパラメータを何度も見直す。……おかしい。特に問題はないはずだ。
……疲れた。後もう一度やってダメなら、もっと低レベルなところからログを取ってみないと……と思ったところで、作業員たちから声が上がった。
「もっと丁寧に触れって! サシミの色、なんか剥げてきたじゃないか」「うるせー!」
……!?
食品サンプルとはいえ、テストのカラーパターンを揃えるための、本物の刺身のような色合い・光沢を出すための特注品であり、少々手荒に扱うくらいでは色落ちしないような物を準備したはずだった。
それが、よくよく見るとひとつだけ安っぽい色をしていた……。
 §
敗因はそれだった。サシミパターンの投入順と、たんぽぽの出力位置予定は紙に書いてある。ビデオではたんぽぽの位置が、紙に書いた物と同じであるかを確認している。だが、サシミパターンが本当に正しい物が流れているか、と言うチェックが甘かった。ぱっと見では同じに見えたが、機械の目はごまかせなかったようである。
刺身サンプルを取り替え、少しだけ確認のためレーンに流すと、正しい位置にたんぽぽが置かれていることが確認できた。
 §
さて……。最初に書いたように「一連のパターンは一度に流さないと行けない」。ビデオは依頼元へのテスト結果の証拠として添付するため、上書き禁止メディアに焼いてある。
バグではなかったことには安堵しつつも、まだ続く一連のテストと、無駄になったメディアの山を前に、深く溜息をついたのであった。



# 8割方嘘です。ってかどこに真実が含まれているんだ?